誰一人孤立させない安心して暮らせる社会づくりに向けて~北海道胆振東部地震厚真町の事例から~【2022年度学会大会 分科会4 概要報告】
野崎隆一
((特活)神戸まちづくり研究所代表理事)
阪神・淡路大震災以降、「生活再建支援金」「災害ボランティアセンター」「被災者見まもり支援」等々、多くの制度や仕組みが生まれたが、東日本以降の頻発する災害被災地での活動において、十分に効果を発揮できていると思えない事象に多く遭遇した。一方で、新たな環境において、多様な工夫が生まれていることも確認できた。それらが機能するのに不可欠な「繋ぎ手」や境界領域の「補完」について、全国各地での事例を検証している。
今学会で事例として取り上げたのは北海道胆振東部地震における厚真町の活動である。報告者は、小山敏史氏(厚真町)と定池祐季助教(東北大学)。その他、柴田祐教授(熊本県立大学)と江崎太郎氏(YNF代表)、野崎隆一(神戸まちづくり研究所代表)が加わり議論を行った。今回の事例は、町役場が、支援者の連絡会議に同席し受け止めたニーズを、既存の制度をアレンジしたり、場合によっては独自の仕組みをつくったりして対応しているのが注目されており、その背景には、職員の中の移住者の存在や移住促進事業での経験が生かされたことが判明した。小規模な自治体であり、庁内の風通しが良いということも幸いしたと思われる。
報告を受けたコメントや意見交換から見えて来たのは、次のような視点だった。
新たな災害が起こるたびに、制度や仕組みの欠陥が指摘され、新たな制度や仕組みが生まれるということが繰り返されている。しかし、災害も被災地も被災者も多様であるなかで、必要なのは、オーダーメイドな復興であり、被災ニーズを見据えたオーダーメイドな支援である。厚真町の事例から、我々が学ぶのは、制度や仕組みを活用して「足らずを埋める」だけではなく、復興のオリジナリティを大事にして「知恵を絞り工夫する」ことだと思う。