岩手大会テーマ “岩手のこの10年 生まれたこと・変わったこと”
坂口奈央(日本学術振興会)
今年度の日本災害復興学会大会は、9月18日(土)~20日(月・祝)、岩手県陸前高田市をベースに開催される。
「陸前高田市をベースに」と記した通り、現時点では、現地開催+オンラインのハイブリッド式による開催を予定している。本来は、昨年度の予定だったが、コロナ禍による社会情勢の予測が難しかったこと、また、東日本大震災から10年の変化を、実際に見て、生活者らの話を間近に聞いていただきたいという実行委員メンバーの思いのもと、1年延期した。他の学会は、今年度も軒並み、オンライン限定開催が決定している。当学会の基礎をなす「現場で何が起きているのか」、この軸を改めて問い直しつつも、参加者が安全に参加できること、そして陸前高田を始め三陸沿岸の人々が安心して大会を受け入れてもらえるよう、実行委員一同、開催基準を検討するなど、現在準備を重ねている。
今年の大会テーマは、表題の通りである。東日本大震災津波による広範囲に甚大な被害を及ぼしたあの日から、三陸沿岸で暮らす人々は、幾重もの犠牲を被った。当時は、支援者も、被災者も、何から手を付けたらいいのかわからないほど、混沌とし、手探りの状態から復旧・復興はスタートした。あれから10年、近年少しずつ「震災のおかげで」という言葉がそこで暮らす人々から聞かれるようになってきた。人々は、震災によって生成された・変化したコトやモノによって、新たな日常を形成してきた。震災による新たな日常は、犠牲の上に成り立つからこそ、尊くかけがえのない「おかげさま」となっている。こうした「おかげさま」を構成する震災によって生成されたこと、変化したこととは、具体的に何か。特に、岩手県は、本州1広く、内陸から沿岸まで車で片道2時間かかる。この距離感が、発災当時は、支援の困難さを生み出すこともあったが、距離感があったからこそ生まれた関係もある。今大会では、岩手に焦点化し、この10年を多くの人々と総括していきたい。