「一人ひとりの生活復興を支える」ということ
山下弘彦(日野ボランティア・ネットワーク 代表)
2000年に最大震度6強を記録した鳥取県西部地震の被災地、日野町のボランティア活動では、地震で壊れた屋根にブルーシートを張って雨漏りを防ぎ、家屋の修復工事を待った。
住家はもちろん、「自分の目が黒いうちは、親の代から引き継いだ蔵が雨漏りで傷んでいく様を見たくない」といった高齢者の声に応え、蔵などもできる限り養生をした。
あるとき、活動後にその1軒から電話があり、お叱りを受けた。地震で壊れたのを機に古くなった蔵を解体しようと考えていたのに、知らぬ間におばあさんが依頼して手当てがされていた、関わらないでほしい、という依頼主のご家族からの電話だった。
被災をすると、家屋を補修するか再建するか、補修・再建をどのように行うか、どこに再建するかなど、暮らし全般のことが関わってくる住まいの方向性に迷い、なかなか決断できないことも多い。被災は誰にとっても理不尽で、それまで考えていなかった形でこれからの暮らしのあり方、将来展望を持つことを突然迫られるわけなので、致し方ない。
また、家族の中で意見が分かれることも、ままある。その場合、最終的には家族で合意していかないといけないが、どのような選択をするにしても、それぞれが、そしてお互いに気持ちの折り合いをつけていくことが重要だ。
気持ちに折り合いをつけていく時間、そのプロセスには、自分の思いを安心して吐露でき共感してくれる相手がいること、場があることが大切で、ふだんは友人や近所の方など様々な社会システムが支えているが、災害時にはこうした日常が壊れてしまう場合も多いので、復興に関わる新たな人材や取り組み、仕組みの役割も大きい。
人によって、家族によって、地域によって、それぞれの事情があり、被災によるしんどさや復興にかかる物心両面での課題は災害の規模や被害の大小によって決まるものではなく、それぞれの困難さがある。
被災者見守り・相談支援事業の制度化や災害時の地域包括ケアともいえる災害ケースマネジメントなど、一人ひとりの生活復興を支えるまなざしを持った取り組みが進んできているなかで、課題解決はもちろん、当事者の多様な「こうしたい、こうありたい」思いを大切にし、お互いを理解する支援を心がけたい。
そのためにも、被災された方・地域も、様々な立ち位置で関わる支援者も、さらに連携を進めることが重要と考えている。