北海道で、巨大地震に備えるために−2022年日本災害復興学会京都大会印象記−
加藤知愛(北海道大学公共政策大学院)
2022年10月1日~2日に開催された日本災害復興学会2022年京都大会に初めて参加し、研究発表の機会を頂戴しました(「コマンドコード:すべての被災者を安全に避難させる−北後志広域防災連携プロジェクトの事例研究(加藤知愛、米田夏輝、中野佑美)」)。事例研究の対象である「北後志広域防災連携プロジェクト」とは、小樽市に隣接する5町村(積丹町、余市町、仁木町、古平町、赤井川村)の防災備蓄、避難所と備蓄倉庫の位置、食料と医薬品の提供を最適化するシステムを、官民学の力を合わせて創る社会事業です。発表では、この事業を推進するために開催されたワークショップで明らかになった課題と導出された行動計画に着目して、本事業の展開可能性と解決方法の仮説を提示しました。拙い発表でありましたが、座長の岡本正先生の進行に助けていただき、また、会場から山崎栄一先生、青田良介先生、本莊雄一先生より、温かいコメントと助言をいただき、感謝に堪えません。
北海道では、南海トラフ地震を超える巨大地震(日本海溝・千島海溝沖地震)に対する防災対策推進計画の立案が求められています。北海道大学公共政策大学院においても、災害復興を牽引する公共政策と地域ビジネスのあり方を検討すると共に、多分野横断型、多セクター協働型で復興を牽引する人材育成プログラムの開発に取り組み始めたところです。北海道南西沖地震、胆振東部地震を除いて、被災経験が少ない道内の自治体において、まだ発生していない災害に対する備えるしくみを創設することは容易ではありません。過去の被災地の復興の事例や、災害復興基本法の制度設計の試みなど、日本災害復興学会の膨大な研究蓄積と実践知に学び、それらの知見を自治体の政策・施策化に役立ていきたいです。
10月1日の第2分科会「誰一人孤立させない安心して暮らせる社会づくりに向けて~北海道胆振東部地震厚真町の事例から~」で、定池祐季先生と厚真町の小山敏史さんから、東北大学、宮城大学、神戸大学など6大学で実施しているレジリエンス人材育成プログラムでお世話になっている厚真町の災害復興のプロセスを肉声で学ぶことができました。現場の声を傾聴することを起点に、災害復興研究の第一歩を踏み出したいと願っています。