災害支援でうまれた「つながり」の継続と課題―平成28年熊本地震から令和2年7月豪雨へ【2020年災害復興学会 オンライン分科会1 報告】
向井洋子(熊本学園大学准教授)
本分科会は、熊本県で活動する3種類の災害中間支援団体の活動状況と課題を報告したうえで、災害支援の「つながり」について、学術的な観点と災害支援現場の観点という2つの立場から議論したものである。
まず、熊本地震からそのまま継続活動するKVOADの樋口氏から状況報告である。活動は、(1)地元マスコミを用いた情報発信、(2)行政・災害VC・民間団体の三者連携、であった。課題は、(1)地元が総合判断できる仕組み、(2)専門家/個人の受け入れ方法整理、(3)支援実施条件の整理、であった。
つぎに、熊本地震で立ち上がったプロジェクトのうち、7月豪雨では残っていたプロジェクトが活性化したBridge Kumamotoの三城氏からの状況報告である。活動は、(1)プロジェクトごとの活動、(2)メンバーのクリエーターが各自情報発信、などであった。課題は、新プロジェクトの展開であった。
さいごに、7月豪雨の少し前に、「取り残された人々」への支援から発足したくまもとSDGs推進財団の成尾氏からの状況報告である。活動は、(1)フォトジャーナリストに委託し助成団体の活動を情報発信、(2)クレジット決済の寄付を集めて活動団体を助成、であった。現在、試行錯誤中とのことであった。
上記報告を受け、京都経済短期大学の菅野氏から、中間支援団体はネットワークのハブになっており、うまく利用すると支援が円滑化するとのコメントがあった。また、ボランティアが「被災地のファン」にならず、外部支援者が地元調整を経ず「ヒーロー・モード」化するという、コロナ禍の論点も出された。
YNFの江崎氏からは、現場で活動する団体としての5つの課題が提示された。(1)新型コロナとの付き合い方、(2)支援活動の継続性、(3)支援活動の専門性と人材育成、(4)情報共有方法、(5)先発災害とのかかわり、である。そのうえで、中間支援団体の将来ビジョンへのコメントがあった。