日本災害復興学会・京都大会に向けて
中野元太
(京都大学防災研究所 巨大災害研究センター 助教)
最近、東日本大震災の体験を伝える若者語り部と、話す機会が多くある。災害体験を若者たちの言葉で発信することによって、地域の人々の災害との向き合い方にも多大な影響を与え、被災地の未来を構想し、災害遺構の保存と活用に中心的な役割を果たす。体験を話すことに辛さを覚え、時に立ち止まりながらも、また語りだす若者も多い。東日本大震災当時、幼かった子どもたちが「子どもの頃には理解できなかった体験を、大人になるにつれて言語化できるようになる」ように、成長とともに震災を再体験し、震災から10年以上を経て、語り部としての一歩を踏み出す若者もいる。複数の若者の語りには、自身の体験と世間との見方のズレが表現される。世間はあの出来事を「奇跡」や「悲劇」で表現する。しかし、そこで起きた出来事は、そうではないという切実な訴えでもある。
若者が災害体験を語るようになったのは、そんなに古い話ではない。もちろん、個別的に若者が語る例はいくらでもあっただろうが、より注目される形で若者語り部が登場したのは2008年だろう。阪神・淡路大震災当時子どもだった27人の若者が、子どもの目線で体験を語った。その記録映像は、今でも人と防災未来センターの展示室で、毎日、再生されている。そこで案内業務をする語り部ボランティアも「若い人の語りは、若い人に伝わっている」と、若者の語りの力に関心を寄せている。
若い人が防災・災害復興で重要な役割を果たすようになっているのはなぜだろうか。世界に目を向けても、国連メジャーグループの一つにChildren&Youthがあり、国際的な防災政策に影響力を持つようになった。若手研究者や若手プロフェッショナルが参画するネットワーク組織U-INSPIREもアジア10ヵ国以上で立ち上がった。若者が防災・災害復興に貢献しようとする動きは、日本だけではないようだ。
そんな若い人たち(私にとっては、ほぼ同世代の人たち)の努力と大活躍に、私も負けてはいられない。日本災害復興学会・京都大会の幹事長という大役を仰せつかって、諸先輩の先生方の御指導を頂きながら準備に奔走する日々である。社会的な状況も予断を許さないが、できれば久しぶりの対面開催を目標にしている。既に分科会の募集もスタートしている。ぜひ、京都の残暑も終わりに向かう10月1日(土)、2日(日)には、京都府宇治市まで足を運んでいただき、闊達な議論にご参加頂ければ幸いである。