動く市民ボランティア―アメリカ・イタリア・台湾・ニュージーランドの国際比較【2021年度学会大会 分科会5 概要報告】
斉藤容子(関西学院大学)
ボランティアやNPO/NGOが災害時に被災者・地へ支援活動を行うことは、被災者に対して何かしたいというボランティアの「想い」がそこにはあり、日本のみならず世界の多くの国々においても同様である。しかし、ボランティアやNPO/NGOの「動き方」については、国や行政のシステムのひとつとして「動く」のか、あるいは自然発生的に連帯的な行動として「動く」のかなど、国によって様々である。本分科会では、イタリア、アメリカ、台湾、ニュージーランドを事例として各国のボランティアが災害時に被災者支援のためにどのように「動く」のかを比較検討した。
イタリアを担当した関西学院大学の斉藤容子は災害防護庁を中心として確立された官民連携のシステムを報告した。アメリカは連邦政府と一体となって動く赤十字のような団体がある一方で独立した支援を行う団体もあり、様々な形態があることを東北大学のリズ・マリが紹介した。台湾では緊急期、復旧・復興期のすべてのフェーズにおいて国や行政以上にNGO・NPOの存在が大きいことを京都大学の李旉昕より報告された。さらにニュージーランドを担当した龍谷大学の石原凌河からは緊急事態省(CDEM)のもとにあるCDEMボランティア団体、消防と共にある消防団など官民連携が主流であることが報告された。
各国の共通項として避難所運営は行政の仕事ではなく連携しているボランティア団体が責任をもって実施しているという点であった。またそのためには平常時から行政とボランティア団体が連携をしていたり法制度が整えられていたりすることも緊急時に素早く動けるためのポイントであることが確認された。しかし、ボランティア団体によって被災者に素早い支援がなされるという利点はあるが、被災者の「エンパワメント」という視点においてみると欠けている点があるのではないかということも各国の共通課題としてあげられた。また国によっては緊急対応は官民連携によって素早く行われるが、復旧・復興の考え方の違いによってボランティア団体の関わり方が変容することも確認された。
本分科会の研究会は今後各国の災害時の市民ボランティアに関してより詳細に調査を継続するとともに、その中でも日本における適用可能性とそれに伴う課題を検討していく予定である。